那由多の果て

伝埜 潤の遺産。主に日々の連れ連れ。

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違うんだってば…。

やっぱり今回もか…。私は常々主張したいと思っていることがある。すなわち、

真田『幸村』じゃねええぇぇぇ!!

彼は幸村ではないのである。何、そのニューラナーク村的ファンタジックな名前!やっっっぱり今回の大河も幸村だった!だから信繁だって言ってるのに!前も一回書いたのだが、幸村は江戸時代の創作名である。それより信繁の方が素敵じゃないか。お兄ちゃんとも繋がりがわかりやすいし。知名度って、大河においてそんなに大事なのかしら。
ただ、キャスティングはグッジョブだった。あぁよかった…また天地人のときの、某何たらボーイズ的な顔だけのアイドル俳優だったら、大河に失望するところだった。うん。あれは酷かった。浜田さんでよかった…。ちゃんと「家康に腹を切ると言わせた男」だった。
ちなみに、直孝くんはいつ出て来るんだろ。もう出てるのだろうか?本多さんばっかりで、井伊ファミリーの存在感が薄い。滋賀県は今年が勝負なんだからさ、もう少し主張させてくれたっていいじゃないかと思うんだけど。
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白肋の記憶5 アスカロン番外

アルケイドとの試合で前衛としての頭角を示したバレンシアは、今までから一躍、有望視され始めた。如何せん粗削りなバレンシアの近接戦闘の資質を鍛えたのは、『刃』寮のアルケイド、ミハイル、エレジアである。特にエレジアは、最初から剥き出しの敵意と闘志を持ってバレンシアの自主訓練に付き合った。
「全ての攻撃を受けようとするな!」
エレジアの怒号を無視し、バレンシアはレコンキスタを捌いた。轟音が響き、エレジアが苦い顔で腕を振るう。鉄球の勢いを殺す両足が砂を撒き上げる。飛来する鉄球をまともに打ち返したため、バレンシアの腕に重い痺れが残った。
「お前の反射なら、余裕で避けられただろうが…せめて受け流せ。それでは攻撃が続かない」
エレジアは苛々と、しかし的確にアドバイスを寄越す。そのエレジアに、バレンシアは内心で頭を下げた。そのアドバイスは聞けない。
バレンシアは今まで、一切の攻撃を避けていなかった。全てその腕で、身体で受け続けている。そのため野戦服はぼろぼろに、バレンシア自身の身体も――特に関節が悲鳴を上げている。
「頑なに攻撃を受けようとするね、バレンシアは」
バレンシアとエレジアの戦闘を眺めていたアルケイドがぽつりと零す。ミハイルはそれを横目で見遣り、何も言わずに視線を戻した。
「バレンシアのセンスと筋の良さならとっくに、避け方や流し方がわかっているはずなんだけどね」
響く金属音に、アルケイドは黒瞳を僅かにしかめた。
「確かに。あれでは腕を潰す。エレジアが攻撃しあぐねている」
「エレジア!代わろう、僕もやりたい」
ミハイルの指摘に、アルケイドは声を上げた。
棒術と体術のアルケイド、クレイモアによる高速の剣撃を得意とするミハイルが本気になれば、バレンシアもさすがに反応が遅れる。だがエレジアのようにタイムラグを伴う大技ばかりならば、バレンシアはかい潜ることができるはずなのだ。
「あいつは本物の馬鹿か。あれでは身体が保たないぞ」
汗を拭ったエレジアが悪態を吐く。
「俺やアルケイドより、お前との模擬戦闘が望みらしいな」
「あいつは壁になりたいんだとよ。そのために、重い攻撃を受ける癖をつけたいらしい」
ミハイルの言葉を受け、エレジアが吐き捨てた。ミハイルが眉を寄せ、小さく反芻した。
「壁、か」
「ところでお前、ユハ・パラスケはわかるか?」
不意に変わった話題にミハイルの秀麗な眉が跳ね上がる。一際鋭い打撃音が響き、バレンシアが呻く声が聞こえた。
「わかるが、それがどうした。アルケイドと同じ班だろう。俺よりあいつの方が良く知っているはずだ」
「…そうか」
ユハ・パラスケは現四年生の中では、傑出した後衛だと言われていた。言われてはいたが、班も寮も違うエレジアには今ひとつぴんとこない存在だ。そのユハに、バレンシアが並々ならぬ執着を持っていることに気がついたのは、ごく最近のことだった。
「私たちの与り知らぬところではあるが…そうも言っていられまい。ミーヒャ、そのユハ・パラスケは少々面倒な事態に追い込まれていないか?」
「…友人は少ないようだ――などと言って、終わらせられない話だな。パラスケは同級生から迫害されている。殊に『弦』の同級生に」
エレジアは緑眼を細めた。
「迫害、ねぇ…」
「少なくともあれは、いじめではないな」
班活動ならば、アルケイドが一緒だ。生粋のヨーロッパ生まれでないアルケイドは、時折はみ出し者扱いを受けていた。ミハイルは図書室でユハに会う。ミハイルは学年こそ四年生だが、実年齢は一歳年長である。それに加えて無口で無表情。近づき難い印象のせいで、友人は少ない。
生徒が集まれば、その輪から必ず弾かれる。そのためユハとアルケイド、ユハとミハイルが近づくのは、ある意味で当然の結果と言えた。
アルケイドの蹴りが顎に入り、バレンシアの唇から朱が糸を引いた。それを見ながらエレジアは苛々と呟く。
「バレンシアは、ユハ・パラスケの壁になりたいんだと」
「…壁。ユハは最後衛の結界士だぞ。ユハを守りたいなら、前衛に出るよりも、近くにいてやるべきじゃないのか」
直接攻撃に晒されなくても傷を負ってしまうユハを守りたいのならば、かえって前衛を志すのは的外れだ。しかもバレンシアは治癒術の使い手である。
訝るミハイルに構わず、エレジアは続ける。
「ミーヒャ、バレンシアの先祖帰りが治癒術だというのは知っているな?その実態が、一時的な細胞の成長促進だということは?」
「…知らなかった」
「ならば、パラスケの先祖帰りが、自己治癒の速さだということは?」
ミハイルは顔をしかめた。ミハイルには薄々、エレジアの言いたいことはわかっていた。だが、エレジアがここまで歯切れの悪い物言いをするのも珍しい。ゆえにミハイルは先を促した。
「つまりは何だ?お前は何が言いたい?」
エレジアは、脇腹を蹴られてのたうつバレンシアを睨みながら、吐き捨てた。
「あいつはユハ・パラスケに治癒術を使えない。使えば、パラスケの寿命を一気に縮めかねないからだ。だから、あいつがパラスケを守りたいなら、あいつ自身が壁になるしかない」

ユハは何も言わない。バレンシアは何も訊けない。人間関係を築くことが苦手になっていたバレンシアには、ユハを守る手だては愚か、ユハに友愛を唱えることすら難しかった。
『俺はお前に守られたくない』
ひねくれたバレンシアの、それが精一杯だった。
入学早々、寮の部屋割で問題が起きた。散々たらい回しにされたユハが、荷物を抱えて部屋に転がり込んできたときの、疲れた笑顔で発された第一声をバレンシアは忘れてはいない。
『ごめんね』
何がごめんね、だ。何に対するごめんね、だ。お前が何かしたわけではないくせに、なぜ謝罪する。
あのときの、言いようのない怒りを、バレンシアは忘れてはいない。
実のところ、バレンシアは学年で最も素行の悪い生徒の一人だった。主に喧嘩である。『弦』寮の生徒どころか、『杖』『刃』の生徒にも噛み付き、殴り合い、大抵相手を保健室送りにしてきた。ひとえに、ユハに対して心ない言葉を吐いた相手ばかりを殴った。バレンシア自身はそれで退学になっても何ら構うところなどなかった。それは己の境遇を受け入れるユハへの抗議であり、己の境遇への反抗のつもりだった。
だがそれも最早、意味を為さないのだと思い知った。四年の間、部屋に帰っては唇を噛むユハの、傷ついては治っていく手足を見て過ごした。卑屈な主張を続けるのは無駄なことだと知った。だからバレンシアは、再びレコンキスタを取った。己の境遇を、切り開くために。
「おかえり」
寮に帰れば、ユハの朱眼がバレンシアを出迎える。エレジアの星を受け止め続け、アルケイドに滅多打ちに打たれた全身は、ぎしぎしと軋む。蹴られた顔面は腫れ上がっているはずだ。ユハの心配の目が痛い。
「…ただいま」
「バレンシア」
名を呼ぶ声に、バレンシアは顔を上げる。
「その。…大丈夫?」
労りの声に、バレンシアの眉が寄る。大丈夫じゃないのはお前の方だ。それを見たユハは苦く笑った。
「ごめんね。余計なことだった?…よね」
「…いや、」
それきりバレンシアは言葉を発せない。それが、ユハに何を抱かせるか、バレンシアにはわからなかった。
――それが君の答えか、バレンシア。僕に守られたくない君の、それが答えか。僕にはそれしかできないのに。それが、僕がアスカロンでいられる唯一の方法だというのに。この、人に在らざる身の上の、僕が、君に受け入れてもらえるただ一時だというのに。
それすら君は、否定するのか。
バレンシア。
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左寄り。

前回、右左という記事を書いた。私は多分左側だ。ナショナリズムに幻想を抱いているロマンチストでもあるけれど、それが幻想だと気がついてはいる。
が、改めて考えると左は左だが、そうそう簡単な二元論でもなかった。
共産党さんが街頭演説をしているのを、たまにはちゃんと聞いてみた。が、やっぱり何にも頷けるところがない。
「議会では多数を占める政党が大きな発言権を有し、政治を好き勝手に切り回し、少数派の意見を踏み躙っている!それは大阪の橋本と同じだ!」
と、端的に言うならこんな感じのことなんだが…えーと、それはいわゆる合法的な選挙で決まったことですよね?ということはあんたらは、有権者の意見が反映された(はずの)議会が気に入らないと。ならば有権者の賛同を得られるような公約をし、多数派になりなさいよ。というか、そのために街頭演説してるんでしょうに。自分たちが多数派になった暁には、一体どんな主張をするんだか。
残念ながら、それが民主主義だ。少数派の切り捨ては民主主義の得意技である。少数派の意見を代表することはとても、とても大事なことだけれど。でもあんたらにそれは無理だわ、その主張の仕方では。
とはいえ、こんなところで呟いているだけの私よりは、ずっとマシなんだろうけれどさ。
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深夜のテンション。

人間、疲れていると何をしでかすかわかりません。
という訳で、過去の恥を晒してみる。大学三回の就活の頃に書いていた、ブルバのスピンオフという名のほもえろ短編。魔が差したんですよ、魔が。
知っている人はご自由に、知らない人もご自由に。でも18歳以下の方は、ご遠慮いただきたい。などと書く日が来ようとは。





「ガンショットグリッター、」
「あぁ?」
ぽつりとティールがネイを呼んだ。ネイはコーヒーメーカーを止め、ティールのいる窓際へ視線を送る。
ジェイが退院し、ティールが加わったソニアの隠れ家に、ネイも住みつく羽目になった。ネイのアパートはティールが爆破してしまい、今夜の宿にも事欠く状態だったためだ。おかげで賑やかなことこの上ない。
「何かしてほしいのか?それから、俺はネイだ」
マグカップを持ったまま、ティールが埋もれるソファに近寄る。片膝をネイに撃ち貫かれたティールは動き回ることができない。問いかけに、ティールは眼鏡越しにネイを見上げて笑った。
「なー、ネイ、」
無意識の躊躇いから、結局離反者の粛正を果たすこともできず、自身も酷い重傷を負ったティール。狂犬の如き戦闘を展開したが、今こうして動くことすらままならない姿は大人しく、いっそ可愛らしいくらいだ。
その唇がついっと孤を描き、包帯で巻かれた右手がネイを招く。
「えっちいことしようぜ」
ネイは翠緑を凍りつかせた。前言撤回、可愛くない。寧ろ怖い。何、この子。ネイは窓の外を見る。明るい。午後の穏やかな陽気。時計の鳩が三時を告げる。だが今はその声すら、シュールな状況を煽り立てるだけだ。次いでネイはティールの手許に収まっているマグの中身を確認した。やわらかく湯気の立つココアは、さっきついでだからとネイ自身が作ってやったものだった。
にっこりとネイを誘うティール、塩の柱のように動けないネイ。
「お前な…」
「んだよ、俺は至って正気だぜ?」
もともとがあんまり正気とは言えねぇけどなァ、とティールは声を上げて笑った。ネイは額を押さえ、げんなりと言葉を返す。
「ティール。人をからかうのもいい加減にしろ」
「本気なんだけどな」
マグをサイドテーブルに置き、ティールの青鈍色の瞳が笑いを消した。ぞくりと背筋に冷たいものを感じながらも、ネイは抵抗を試みる。
「勘弁しろよ。いくら俺でも、掘られた経験なんか――」
「は?」
ティールは眼鏡の奥で、きょとんと瞬いていた。その反応にネイも混乱する。
「何言ってんの?」
「違うのか?」
そうか、えっちいことイコールセックスと決めつけたのは短慮だったか、とネイが安堵の息を吐きかけた刹那だった。
「あぁ、そうか――こう言った方がわかりやすかったか」
にっこり、この笑顔にネイは覚えがあった。ティールがスコーピオンをぶっ放す直前の表情だ。そして両腕をネイに向かって広げ、小首を傾げて、
「抱いて?」
事もなげにティールは言い、わかりやす過ぎてネイは目を剥いた。



ブルーバード〜ベイリーズ・キス〜



「冗談…!だいたい怪我人が何言って、」
ネイが狼狽の中で台詞を紡ぐが、片足だけで立ち上がったティールに抱きつかれ、声を途切らせる。
「だって溜まるし。あんただってそうだろ、男なんだからさ。だめ?」
首に腕を絡ませられ、上目づかいに見上げてくる青鈍色の双瞳から、必死に顔を背け、ネイは逃れようとあがく。
「だめ、って、六つも年下の子どもに手を出せるか!」
「じゃあいいや」
存外にあっさりと解放され、ネイは翠眼を瞬く。ティールはすとんとソファの凹みに戻った。拍子抜けしつつも胸を撫で下ろしたネイだったが、次の瞬間、衝撃の第二波が襲った。
「二藍に頼もう」
「っ、待て!頼むから待て!二藍は十四歳だろうが!」
思春期真っ只中に男に喰われるとなれば、さすがに二藍でも性格が歪むだろう。しかも、あの妙に男前な十四歳は、ティールの誘いをあっさりきっぱり了承しかねない。
「えー、性教育としちゃあいい年頃じゃねぇ?あいつ絶対、自慰も知らねぇぜ?」
「だとしてもだ!お前のそれは何かちがうだろ!?情操教育上よろしくありません!」
唇を尖らせるティールに噛みつくように返し、ネイは頭を抱えた。何でこんな話してるんだか。
「だってシアンは触らせてくれないしプルシアは腕折っちまったし。あんたか二藍しか残ってねぇ。あ、でもあいつも鎖骨折っちまったか…」
その台詞に、ネイは半ば納得した。HIVキャリアであるシアンは求められても断るだろうし、プルシアの腕を折ったのはティール自身だ。
「ひとりで擦れよ…」
「えー、」
「じゃソニア、」
「やだ」
当然のように除外されていた人物の名前を出すと、間髪入れず否定が飛んだ。あまりにきっぱりとしたあからさまな感情に、知らず苦笑が零れた。途端に仏頂面になった唇を突き、仕返しとばかりにネイはティールをからかう。
「あんなに好きでも?」
ティールがきゅっと眉を寄せた。
「ばか。好きだからだ」
目を泳がせ拗ねたように呟くティールが、思いの他真剣な目をしていたから。絆されてやるための理由をつけ、ネイは溜息を吐いた。
「えっちいことしようか、ティール」
左側の長い髪から覗く耳に囁いて、細いがしっかりとした腰に腕を回す。
「どうした?するんだろ?」
一瞬だけ目を見開いたティールは、訝るように尋ねる。
「経験は?」
「女なら、それなりには」
ネイが答えると、ティールはちろりと舌を出した。
「ん。期待してるぜダーリン」


ティールは一見してソニアよりやや細く、肉の厚みに欠ける。使用する武器の違いもあってか、ソニアの躍動する肉の逞しさに比して、精密機械のような直線の鋭利さが目を惹く。だがインナーを脱いだティールの上体を見て、ネイは考えを改めた。
「何か面白いのか?」
怪訝そうに眉を寄せるティールを制し、ネイは不躾にその身体を眺める。
しなやかな筋肉が張り詰める、綺麗な孤をいくつも持った身体だ。スコーピオンが如何に反動の小さい銃であるとはいえ、サブマシンガンの二挺拳銃などという離れ業を行うのだ。身体が出来ていない訳がない。ティールの、肩と背筋の滑らかな隆起に指を這わせ、ネイは感嘆する。
「左が85か?こっちの方が発達してる」
「それやめろ、こそばゆい」
指先だけを何度も往復させるネイに訴え、ティールはネイの襟元に手をかける。
「ツァンに比べりゃ貧弱だろ」
「あぁ。けど、」
「それがどういうことか、あんたにわかるか?」
ネイの声を遮り、ティールは唇の端を吊り上げる。その間ぷちぷちと釦を外す行為を止めはしない。両手の人差し指が使えないというのに、器用なものだ。
「ナイフか銃かの違いだろう?」
ティールは声を立てて笑った。露になったネイの白い胸元に縋って舌を這わせ、目を細める。
「ちょっ、」
「ハズレ。残念だな」
「そこで喋るな、っ痛!」
素肌に他人の吐息が触れる感触。ぞわぞわと身を震わせたネイは、突然走った痛みにティールの肩を掴んだ。
「〜〜っ、噛むなよ」
ティールの犬歯が鎖骨に喰い込んでいた。皮膚を破られなかっただけましかと溜息を吐く。ティールは歯の形に凹んだ皮膚を労るように舐め、ちゅっと吸いついた。
「答がわかったらいつでも言えよ。御奉仕するぜ?」
ネイは渇いた笑いを零し、曖昧に頷いた。
「そういやお前、肋骨やってたな?胸触らない方がいいか?」
「やだ」
「やだってお前ね…下手したらズレて刺さるぞ?」
ネイはくっきりと残るソニアの手の痕を示す。胸骨の辺り、赤黒く痣になっていた。
「あのばか野郎は、肋を外しただけで折っちゃいない。だからあいつは甘いって言うんだよ」
さすがに俺でも折られりゃ動きも鈍ったさ、とティールは言うが、脱臼で済んだにしても普通は動けない。何より吐血していながら。
「ティール、」
ん、とティールが顔を上げる。その身体に刻まれた銃創と刃創、どうしてついたのかわからない痕の数々。蜘蛛の巣の様に、ティールの身体に張り巡らされたそれは、戦歴を物語るものだ。
「あぁ、それ散弾の痕な。まだ内に残ってんだ」
脇腹に広がる斑点状の奇妙な痕をなぞると、聞かないうちに答が返ってきた。
「散弾て…大丈夫なのか?」
「そりゃよかぁねぇだろうよ。金属が身体の中に潜り込んでるんだから。でも今さら取り出せねぇし」
「痛くないか」
「痛かねぇよ。撃たれた瞬間だって痛くなかったんだか、ちょっと待てネイ、そこ舐めんな、っ、」
ティールが身をよじり、小さく呻く。ひちゃりと音を立てて舌を離したネイは、人の悪い顔で笑ってボトムに手を掛けた。それを見たティールが片目をすがめる。
「いつの間にか乗り気じゃねぇ?」
「お前に主導権やりたくないからな」
「余裕のねぇ大人だなぁ」
「何とでも言え」




魔が差したんです。続きを晒すか、思案しております。
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右左。

改めて、自分が学生の頃にこだわっていたナショナリズムとは何ぞやという疑問について、再考してみた。
ナショナリズム。ナショナル・アイデンティティ。ネイション・ステート。結論、全て「幻想」に程近いものである。いわゆるファンタジー。なぜなら私は自分が日本人であるということを、説明ができないのである。日本人って何なのさ。
タイトルがみぎひだり。ちなみに私は多分、左側。だって姜尚中さんの言ってることは理解できるけど、竹田恒泰の言ってることは危ない妄言にしか聞こえないもの。
その竹田恒泰氏の著書が、最近良く売れているらしい。何と。あいつ、学参書にも進出してるけど、一刻も早く排除しなきゃまずいと思う。
もちろん私は地元に誇りを持っているし、日本人で良かったなぁと思うこともあるのだが、それは多分、日本人であることと必ずしもイコールにはなりえないのではなかろうか。
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美浜。

最近怖いもの。の一つが美浜原発だと言ったら、福井の方に失礼だろうか。不快な思いをさせたのならば、ごめんなさい。
私の勤め先は北よりの湖東である。合併により滋賀県の北端は長浜市になったわけだが、地域柄、長浜出身・在住の同僚もたくさんいる。その同僚が今一番ぴりぴりしているのが、美浜原発である。
湖北地域。長浜市の全域・米原市及び琵琶湖の一部は美浜原発の30キロ圏内なのである。故に、大津の腰の重さに対し、湖北は苛立ちと失望を抱いている。大津にとっては、美浜原発の問題など対岸の火事である。滋賀県議会は当初、湖北の声に対し、正に「対岸の火事」を地で行く発言をして批判を食らっていた。斯く言う私も三重県境よりやや内側在住の人間なので、最初はあまりその危険性を認識できていなかったのだが。
昔、美浜原発を見学に行ったことがある。そのときは、エコで安全な最新鋭の発電所だと思っていたし、思わされていた。人間は経験したことしか認識できない。何とも狭窄な生き物である。
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ばか。

最近の日本の言論情勢は、何かおかしい。
平野さんが、津波から逃げずに亡くなったご友人を「ばか」と称した。「彼は亡くなりましたけど」――その二文字の罵倒に込められた悲憤は幾許のものか。
それを被災地への配慮を欠く「許されざる発言」だとして進退に言及する、マスコミや政党の姿。何と言おうか、あほらし。としか表現しようがない。もううんざりだ。
平野さんの「ばか」は文脈をきちんと踏まえれば、十分理解し得る言い回し、一つの表現である。その台詞の上っ面だけを舐めて何が「許されざる」?日本人の日本語能力はいつからそんなに衰えたのか。その「許されざる」の使い方の方が違和感なんだが。ばかはあんたたちだろう。まぁ、ばかっていう奴がばかなんだけどさ。
被災地の方の中には、平野さんの「ばか」に不快を覚える人も、共感を覚える人もいるだろう。そういう意味では、平野さんは「伝わる」言葉で語れる人なのではないかと思うのだけれど。
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懐古主義。

最近、妹がポケットモンスターブラックをプレイ中。彼女はダイヤモンド版ではトシノブという、えらいリアルな名前のライバルを設定していた。今回はライバルの名前が決まっている…とぼやいているところである。
私とてポケモン全盛期の人間?なので、プレイしたことはある。ちなみにグリーン版。最初期である。フシギダネが今も昔も大好きである。初代ポケモンのデザインて、何であんなに秀逸なの。ポニータとか。ピカチュウとか。ケーシィとか。カラカラとパラセクトとベトベトン、あとレアコイルが好きなので、私のパーティは大抵おどろおどろしかったが。ちなみにブラック版で素敵だったのはダルマッカ、炎系ポケモン。何あいつ、かーわーうぃーうぃーとか言いたい。
しかし変わらないのはポケモンセンターと台詞回し。「押してみよう……ポチッとな!」だとか「1、2の……ポカン!」だとか、遺伝子レベルで染み付いているこの感じ。未だに職場のコピー機のボタンは、ポチッとな!と押している。
妹がやってる横で、グリーン版がやりたくて仕方ないが、ゲームボーイはどこへやったっけ。ゲームボーイも今は昔、である。
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遭遇。

旧友に遭遇。一年以上ぶりか。いや、まだ半年か。
夜勤明け・曜日感覚がないという発言に苦笑い。対する私は、曜日感覚は異様にはっきりしている。時間割で動くからな…。どこも過酷。でも、生きるとはそういうことなんだろう。働くとは、そういうことなんだろう。明日も頑張りましょう。
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また気づいた。

ポメラちゃん買ったけど、仕事関係でしか使わないから、小説書くスピードは上がらないや…。とりあえず白肋の記憶終わらせて、二ツ鳴り書かなきゃなぁ。白肋には、現・第五学年が黒竜とやり合ったときのエピソードがある。と、なると当時の第六学年のことを書かなきゃならんので、また人物設定をせねば…。無尽蔵に人が増える。二ツ鳴りは減るばっかりなのになぁ。
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