那由多の果て

伝埜 潤の遺産。主に日々の連れ連れ。

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最後の授業。

今の現場における本業は昨日で終わり。今日から一週間は副業でご奉公、のちお役御免。新しい仕官先を探さねば。
最後、という区切りで何となくいつも思い出すのが、最後の授業という話である。某アメル先生のあれ、私にはどうも気持ちの悪いあれ。何で思い出した。
ともあれ、なかなかに感慨深い。同じとこれにはや三年目、これで何も思わないのも可笑しいか。気心の知れた場所を離れる、やっぱり物寂しいものだ。
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石川さん。

石川智晶さんの最新アルバム「この世界を誰にも語らせないように」が、最近のヘヴィローテーション。この、独特の癖とか毒と悼みが好き。あの言葉選びが好き。このアルバムなら、逆光が一等好き。「断崖の果てまで、いっそ微笑んで走る」の歌詞に、いつも精神が叫ぶ。「いっそ」が入っているのがいい。――アニソン歌手の域に留まる人ではないと思うのだけど。
カラオケに行くと歌えないのが難。難しい。メロディラインにあり得ない歌詞の展開をする。「右往左往」とか、ただで言いづらい言葉を敢えて選んであったり。でもそれが好きなんだよなぁ、因果だよなぁ。
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自縄自縛。

最近、灰の筆の進み具合は私にあるまじく快調なのだが、無性に明るいバカ話が書きたくて仕方ない。
だってアルスランの踏ん切りの悪さときたら。ジークヴァルトのようにただ虚ろに自己完結している訳でもなく、フェリックスのように怒りを通り過ぎた凪いでいる訳でもない。言うなれば自縄自縛。
そんなだから、底抜けにバカでかっちょいいB級映画的なノリのフラグメントが書きたくて仕方なくなるのである。あ、アスカロン番外が終わったら、夏休み編を書くんだ。去年書けなかったから。
イリアッドは妙に順調です。まぁ見えている結末ですが、今暫らくお付き合いいただけたら幸い。
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異変。

10日も早く生理が来たんだけど、え、何、どっか悪いの私?
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半円。

台風一過。予想通りの拍子抜け。有難い限りである。台風は進行方向によって風が相殺される場合がある。滋賀県は相殺される側の半円だったから、最初から実はあんまり心配していない。案の定の拍子抜け。暴風警報発令中とは思えぬ静かさだった。
一方で、心配なのは3月に行った熊野。強風がさらに増す半円にがっつり入っていた。大丈夫だろうか。
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小川のせせらぎのような。

最近の贅沢は、水出し紅茶。茶葉自体もちょっと奮発したが、それよりもボトル。信楽焼ラジウムボトル。ラジウム鉱石含有釉薬を使用。何でも、水道水を入れておいても小川のせせらぎのような生きた水になるらしい。酒ならば熟成が早くなる。
確かに、水を入れておくと異様に口当たりが円やかになる。
これを水筒代わりに職場に持っていくのだが、いかんせんルックスが酒瓶そのもの。酒瓶というか、徳利。コルクの栓がついているが、それをキュポンと抜いて口をつけていると、どう見ても酒飲み。中身は紅茶なんだが。
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信じられない。

勝間和代、お前最低だ。本を裁断したことを自慢げに語るだと?その装丁に紙質にフォントにインクに拘りを込めた人がいることを、知らないのね。最低だ。最低。本を刻むとか。貴様それでも人間か。つまり貴様が書いている本は、刻まれてもいいような本でしかないのね。だから自分が書いた本以外も刻めるのね。信じられない。信じられない。iPadに取り込むことが効率的だと?隙間時間の活用方法?貴様のような効率バカが日本を駄目にしている。世界を駄目にしていく!何が出来るオンナ?保存用にもう一冊?そのページを捲り活字をなぞり、背表紙が擦れてこそ、その本は本としてある。それを何を自慢げに。その本の著者は、その行為に何を思うのだろうね。つまり勝間和代という人物は、最低だということだ。
少なくとも私の価値観の中では、未だかつていなかった最低にして最低だ。同じ人間だと思いたくない。同じ日本人だと思いたくない。
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灰5

「これが、俺とルークの結末だ」
不様で無惨な、結末と決別だ。俺とルークが出会ったあのときに、既にわかりきっていた終幕。
高い弦の音。一定の間隔で鳴らされるそれは耳障りでなく、詩人の指先は紡ぐように動く。
紅の天使に二親を殺された異教徒の子。俺はルークを殺し、その死の上に和平を築く。それがルークの描いた終局だった。それがルークの望んだ予定調和だった。
『いつか、君の手で、私を』
「だが、俺はルークを殺せなかった」
ルークがいなければ、十字架にして楔たる俺など、俺の存在意義など、無に等しい。それなのに、
「ルークは二度と戦場に出なかった。戦場に出ることなく、死んだ。俺の知らない場所で、たった独り」
地を這うような嗄れ声は何を恨んでいるのか。俺にはもうわからなかった。
「それは、なぜ」
詩人が問う。全てを見透かしたような声音が癇に障る。顔を上げれば、虚のような両目を見開き、詩人は唇を笑ませていた。それを呆然と見つめながら、俺の口を衝いたのは無情なる事実。
「処刑、されたからだ。和平を直訴したルークは、反逆者として――さらには戦争犯罪人として、斬首された」
ルークの首が晒されたあのときの衝撃は、俺から全てを奪った。それはあの国の、徹底交戦の意志を俺に伝えた。
終わらない。
ルークが、紅の天使が死んでなお、聖戦は終わらない。ならばどうしろと言うのだ。ルークは俺に何を望んで、俺を育ててきたのだ。俺はルークを殺してその血の上に和平を築く、それがルークの残酷な理想だった、はずだ。
「その日から、俺は現実を見るのを止めた。なのに、考えてしまう。ルークのこと、戦争のこと、この身を灼くのは酒だと思い込んでしまいたかったのに!」
渇いた喉が裂けそうに痛む。灼け爛れる臓腑の痛み。ルークの紅は今も、俺を染め上げる。
「忘れたくはありませんか」
詩人が弦を弾き、尋ねる。
「その痛みを、その悲しみを、その紅を、あなたの嘆きを、忘れたくはありませんか」
詩人の虚に吸い込まれるように、震える唇が声を紡ぐ。
「な、に?」
「私はイリアッド。吟遊詩人イリアッド。あなたは私に糧を与え、私は嘆きを歌い続ける」
喉が痙攣するように、笑声が溢れていた。
忘れたい。忘れたかった。ルークを、あの優しい碧を。そのために俺は酒に溺れ、この世を諦めたのだ。
「忘れさせて、くれるのか」
頬を生温い雫が伝った。詩人が笑む、三日月の唇。みしりと圧力を増した暗闇を引き裂いて、詩人は竪琴を鳴らした。
「その前に、お聞きいただきましょう…ある男の歌を」
詩人の声は朗々たる旋律を紡ぐ。それはある男の一代記。ある男が、剣を取り死に逝く物語。
同時にそれは、酷く懐かしい調べだった。

『愚かしいとわかっていても、私は戦わなければならなかった。殺されるわけにはいかなかった。私はいつか、私が殺してきた人々よりずっと虚しく死ぬだろう。恨まれて、憎まれて死ぬだろう。死んだ後まで罵られるだろう。それでも、私以外の人が手を汚さないために、私以外の人が憎まれないために、私はこの国を護って殺し続けるのだ。あの白髪の義兄のように。いつか戦が終わったとき、私は殺されればいい。全ての憎しみが私に向けばいい。憎まれるべき私は、全ての憎しみを背に負って死ねばいい――』

それは紛れもない、懐かしく懐かしく慕わしく忘れたい、胸を抉るあの紅の、
「ルー、ク…?」
旋律が繰り返される度、目に映る情景は時を遡った。詩人の指先は踊るように時を紐解く。やがて俺が辿り着いたのは、あの紅の日よりも前――ルークが紅の天使となった、そのときだった。
「そうか。ロラン義兄上が――」
悼みに顔を歪めたのは、幾分年若いルークだった。
「逝かれて、しまったか」
ロランとは、話にだけ聞いていたルークの義兄だろう。異教徒の血を引く鬼子、白髪のラウレンティウス。戦場に散ったこの義兄を、ルークはいつも愛しげに語っていた。
「ならば、私が征くしかあるまいな」
苦く笑みながら、ルークは言った。
「義兄上が為せなかったならば、跡を継ぐは私だろう」
この聖戦を終わらせるのは。
先代の王は、異教徒との戦で功を為した英雄だったが、それは続き続ける血塗られた未来を用意した。さらに、捕虜として連行した各地の姫にことごとく子を生ませたため、王位継承権は混乱した。それが白髪の義兄であり、ルークだった。ルークをはじめ、王の庶子の多くは王位を望まず、辺境の農村に隠棲していた。王座に近く残り、義弟たる現王を支えたラウレンティウス、その白髪の義兄の死が、ルークを戦場へ向かわせたのだ。
場面は頁を捲るように切り替わり、ルークは白銀の具足を身につけた。燦然と煌めく十字の意匠。
「国境防衛に徹せよというのが、義兄上のお考えであったろう?」
「それではもはやどうにもなりますまい!我らは父祖の代より始めし聖戦の担い手です。今攻めずして、何時」
ルークは溜め息を吐いた。
それは奇妙な光景だった。幾分年若い、今の俺と変わらない年齢のルークは、義兄の率いた兵の先頭に立って十字を掲げている。俺が見ているのは、詩人が見せるルークの過去。竪琴の調べが高らかに不自然にに響いているが、気に留める者はない。当然だ。これは光景だけ、既に過ぎ去った過去だ。俺は張りぼての玉座に座したまま、目にしているのは真実か、虚構か。
「戦場に出たこともない若造が!憶測で物を言えるは今のうちぞ!」
吐き捨てられ、ルークは顔を微かに歪めて笑った。
「仰る通りだ…私は、戦場を知らぬ。義兄上が如何なるお人だったかも、実はわからないのだ」
寂しげに笑ったルークは、酷く痛々しく見えた。
「――虚構の幻と、お思いですか?」
詩人の声が届く。見やれば、虚ろな眸が此方を射る。
「幻、なのか?」
「どう思われても構いません。ですがあなたの嘆きをいただくためには、これをお見せしない訳にはいかないかと」
詩人の笑み、竪琴が紡がれる。調子を変えた旋律と共に、目にする場面も変わっていった。

『紅の天使』――その異名は、ルークの第二戦にもたらされた。戦場で、ルークの表情は能面のように固まり、振るわれる腕ばかりが鋭さを増していく。切り裂かれるのは黒い具足ではなく柔いヴェール――国境を越えたルークの兵は、異教徒の街を襲撃したのだ。



今までの主人公と違って、忘れたいアルスラン。イリアッドの動き方も違ってくる。さてはて。
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いつかのさようなら。

燕が巣立っていきました。来年もいらっしゃい。
うっかりしているとブログを書くのが疎かになる。生きてます、一応。
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剛性。

私と妹の、音楽の趣味はよく似ている。共にロックが好きで、曲を聞く観点もほぼ同じ。その彼女が最近注目しているバンドが、世界の終わり。とりあえず聞いてみた。彼女はいいと言うが、私は物足りない。
私の好みは、軽いストレスを伴う音楽だ。陰陽座、バックホーン、ACCIDMAN、石川智晶、Cocco、椿屋四重奏、クラムボン、ミッシェルガンエレファント、U2、コールドプレイ等々。ストレスの形はいろいろである。歌詞に打撃に世界観に低音に高音に和音に声音に、何らかの負荷を感じていたいのだ。
世界の終わりに私が感じる物足りなさは、たぶんこれだ。負荷が足りない。妹はしんどくないと宣っていたから、たぶん当たりである。ドラム、ベースレスゆえにとても心地よい、聞きやすい音楽なのだ。負荷を求める私がそもそも想定外の聞き手だろう。
たぶん、私が音楽にストレスを求めなくなったら、それは私の心の剛性がなくなったときだ。私の心が弱くなっているときだ。

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