那由多の果て

伝埜 潤の遺産。主に日々の連れ連れ。

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笑って。

一つ前のブログ記事がなかなか滅茶苦茶。削除はしないけれど。本音だから。

でも今日もたぶん滅茶苦茶。

御無沙汰致しております、伝埜です。ニートです。おかげでオリンピックを満喫しています。昨日はうっかり体操男子団体をリアルタイムで観戦、実に寝不足です。
銀メダルおめでとうございました。オリンピック経験者の乏しいチームでの敢闘。手に汗握るとはこのことかと。判定の云々で後味は良くなかったかもしれないけれど。
ただ、ネット上の魔女狩りは、叩くんだろうな。彼らを。金じゃなかっただの、失敗しただの。あぁ、馬鹿馬鹿しい。お願いだから、彼らの耳に入りませんように。
懸念は、負傷した選手。ムードメーカーというか、メンタルトレーナーというか、とかく笑っていた彼。彼が、笑っていたがゆえに魔女狩りの餌食になりませんように。
日本というのは可笑しな国で、世間というものが多大な力を持つ。オリンピックに出る選手なんかは、もし金メダルじゃなかったら、悔し涙を流しながらすみませんと謝るのだ。誰に?世間に。世間とは、期待をかけておいて、それが達成されなければ制裁を叫ぶ。謝れと叫ぶ。だから選手たちはすみませんと謝るのだ。或いは意気消沈した姿、責任を感じている姿に対して世間は満足し、彼らを迎え入れる。謝るという行為は、世間が多大な力を持つ日本で生きていくための、ある種の処世術であり儀式みたいなものだ。なかなか厄介である。
もちろん私とて国民なので、日本を応援する。だが結果を云々したり、まして批判などするものではなかろうよ。あの場所で、頑張っていない人なんかいないのだから。あの場所に在るために、まぐれやラッキーなんてないのだから。
負傷して搬送される最中ですら、周囲の心配を他所に笑っていた彼。キャラクターだとか言ったって、あの状況で一番苦しかったのは当人だ。その当人が笑っていたら、周囲は笑うしかないじゃないか。周囲が落ちるなんてできないじゃないか。ああいうことができるから、彼はあの場所にいる人間なのだなと思った。エースは気負っていて、四年前の天真爛漫な不敵さ、ふてぶてしさは見る陰もなかった。エースがそれで、チームメイトがプレッシャーを感じない訳がないと思う。そんな中で終始笑っていた彼は、だからあの場所にいたのだ。ああいう人間は、いるだけで周囲を鼓舞する。内心は見えないからわからないけれど。
だが、世間はそれを理解し難いだろう。 負傷したなら、失敗したなら、泣け、謝れ、悔しがれと彼に迫るだろう。笑うな、と。

でも私は、彼が笑っていることを肯定したいのだ。
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正義とは何か。

同時に、悪とは何か。

よくもまぁ皆さん雁首揃えて正義感に満ちていらっしゃることで。
例によって、大津の件である。
脅迫で捕まった某氏に呆れを覚えた私ですが、まぁまぁ同類が沢山いらっしゃること。

あんたら、脳みそは入ってるんですか。

いわゆる吊し上げってのは、いじめと何が違うんですかね?あまつさえ、全く無関係の人に迷惑をかけるとは。自分の価値観で加害者を糾弾して、正義を気取っているつもりですか。法が裁けない奴を私が裁いてやったぞとでも。まぁまぁ御立派ですこと。私にはそれこそ悪に見えますがね。バットマンですか。世の中を陰から守るダークヒーロー。いやぁ、何て吐き気のする自慰行為。
冷静な方がそれを諫めても、ここまでしなけりゃ被害者が泣き寝入りしていただなんて正当化する。気持ち良いですか、独り善がりの正義に浸るのは。気持ち良いですか、それ自慰っていうんですよね。
うわぁ。うわぁ。気持ち悪い。歪んだ正義とはこれですね。正義とは何ですか。あんたらみたいな勘違いした連中に正義を語られたら、この世界は何なのでしょう。

いや、何も加害者を守るつもりは微塵もありやしません。一遍自分でもいじめられてきなさいな。蜂の死骸を食べてご覧なさい。マンションから飛び降りてごらんなさい。そうせざるを得ないほど辛い思いとは何なのか、考えてご覧なさい。それができないなら一遍死になさいな、とは思わないでもないですがね。人一人殺したのですから。刑罰としてはね。
でも、それを当人に問うのは我々のような部外者ではなく、被害者と法である。
ネットが社会を動かせることは、アラブの春やジャスミン革命が証明した。だが、社会を動かすってぇのは、こういうことではないでしょうよ。

絆、とかいうものに振り回されてやいませんか。無縁社会だのなんだの言われてるからって、よってたかって私は部外者じゃないですよ、関心がありますよ、ほらこんなに意思表示してるでしょ、加害者を糾弾してるでしょ、ってのは何か違う気がしますよ。

あら、当初つけたタイトルとズレている。

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イソフラボンが足りない。

生理前でホルモンバランスが崩れている!イソフラボンが摂取したい!
どうも、伝埜です。
何と言うかなぁ、1ヶ月の中のこのタイミングだけは脳が考えることに怠惰になるというか、真剣に考えていても何処かしら散漫になるのだけれど、なぜだろう。やっぱりイソフラボンか。なのに明日は試験ですよ。何の陰謀なの。
ついで、この気候。体調で天気予報できるくらいまともに影響されます。低気圧に滅法弱いのです。直撃じゃないか。前線と低気圧が近づいてくると、頭痛がして意識がぼうっとなります。思考力が著しく低下します。仕事してるときですら、このときばかりは能率落としてしまうもの。
何でこのタイミング。
運の良し悪しでいうなら、悪い方。世の中で一番好きな言葉は、パスツールの

『幸運は準備をした者に訪れる』

だが、準備をして幸運が訪れたのは過去一回だけ。信じたい良い言葉だけれど、世の中にはどうしたって不公平が渦巻いているのも知っている。
とりあえず、イソフラボン。摂取して、寝ます。とりあえず試験中に生理がこないことを切に願う…!

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風切り羽根

シリアス展開ばかり書いていると、ついついこういうB級なノリに浮気してしまう。因みに続かない。たぶん。



「ようこそ、裏切り者のツァン」
たっぷりと侮蔑を含んだ笑声が、ネイとソニアを迎えた。長い蒼髪を垂らした司祭服の青年が両腕を広げる。
「何と言うかだな…お仲間はずいぶんとお前を嫌いみたいだな?」
「それは…そうでしょう。僕は裏切り者ですから。それも、一人めのブルーバードだった。変な崇拝をしてくれていたのも原因です」
ソニアは呟き、歩を進める。
「退いてくれ。僕はセレストに用がある」
言い放ったソニアの足元を、軽やかな火花が抉る。青年の手にはFN-P90の機能美。ネイが反射的にベレッタを掲げ、ソニアがそれを制する。
「裏切り者の分際で、あの方に会いたいなど…よくも言えたものだ。君を失ったあの方が、どれほど嘆かれたことか」
憤怒に銃身を震わせる青年に、それでもソニアは言葉を投げかける。
「セレストは僕の恩人だ。僕の世界は、あのとき、彼と出会って始まった。だけど、それでも僕はセレストに突きつけなければならない。僕らは、幸せの蒼い鳥なんかじゃない、今のままでは!」
「黙れ。ツァン、私は君を信じない。セレストはまだ君に夢を見ているようだが、私は違う。あの方の目を覚まさせるために、私は君を撃つ」
乾いた音に、ソニアの頬が裂けた。青年の緑色の瞳が殺意を宿して煌めく。
「どうするつもりだソニア。あいつはちょっと…いろんな意味で手強そうだぞ」
ネイは顔をしかめて傍らに問う。戦闘に持ち込めば、恐らく制圧できないことはない。だがそれはソニアの願うところではない。
躊躇いを打ち払ったのは、明るいテノールだった。
「ずいぶんと偉そうな口を叩くようになったじゃねェか、ベルディテ?」
ここにいないはずの声に、ネイとソニアが揃って振り向いた。アシンメトリの銀髪、眼鏡のレンズ越しに青鈍色の瞳が瞬く。
「何だお前ら、雁首揃えてこっち見やがって」
唇が半月の笑みを描く。かつてはブルーバード最凶と言われた男――ティールが眼鏡のブリッジに指を当てながら、ごく楽しげに言う。
「負け犬は退がれ。君に今さら用はない」
ベルディテ――ティールが呼んだそれが、青年の名前だった。ティールは唇を歪めて笑う。その眼に灯る酷薄に、思わずソニアが声をかけた。
「ティール」
「あン?何だツァン。まだいたのか。セレストに直に話をつけるんなら、この先の廊下の、左手の部屋だぜ?」
親指でくい、と示された扉の前にはベルディテが立っている。
「そいつには俺が話をつけてやる」
だから、行ってこい。ひらりと振られた掌。ソニアが眉を寄せる。
「だけど、ティール、」
「安心しろよ殺さねェから」
「いや、そうじゃなくて…」
ネイはティールの膝を見やった。膝蓋骨を撃ち貫かれた後遺症は大きい。満足に動かない片足で戦闘の意思ある相手に向き合うなど、狂気の沙汰だ。
「まァ、ベルディテは俺やお前と近い時期にブルーバードに来た、言わば初期メンバーだからな。お前がいろいろ言いたいのもわかンだけどよ、今は止めとけ」
小首を傾げ、ティールはソニアを促す。
「それに、お前はともかく――あいつは俺を殺したくて仕方ねェんだ。たぶん」
「な!?どうして!?」
ソニアが切れ長を丸くして声を上げる。瞬間、空を連射音が引き裂いた。
「私を無視してのお喋りとは、状況がわかっていないな!」
ベルディテがFN-P90の引き金を引いたのだ。
「ほらな?今の射線は俺を撃つためのものだろ?」
「あぁ、だけど、」
容易くそれをいなしながら、ソニアも気づいていた。確かにそれは、ティールを目標にしていた。
「あいつは許せないんだろうよ。セレストに心酔してない俺を、前々からよくは思ってなかったし。その上、ツァンを呼び戻しに行って、そのまま裏切ったんだ。セレスト命のあいつが、許せるはずねェだろ。心配すんな、殺さねェし、殺されねェよ」
片目を眇めてティールは笑い、ソニアが唇を噛んだ。
「あ、そうだネイ、」
ティールは不意にネイの方を向いた。青鈍色が真っ直ぐにネイの翠緑を貫く。
「気をつけろ。セレストの傍には、ヒスイがいる」
「ヒスイ…?」
訝るネイにそれ以上を語る気はないとばかりに、ティールは背を向けた。ひらりと振られた掌。もう一方の掌には愛用の蠍。
「ツァンを、頼むぜ。そいつは、あんたが思うより死にたがりだ」
「ティール!」
Vz85をつい、と掲げ、ティールは唇を歪めた。人差し指のない右手が、ベルディテを招く。動かない足を引きずり、それでもその貌は不遜な笑みに彩られていた。
「そういやァ、その武器を選んでやったのも俺だったな。ちっとは腕が立つようになったのかあァん?試してやるから撃ってきな、箱入りの可愛子ちゃん」
完全にベルディテを下に見た発言だが、ネイは戦慄した。ティールが放つのは紛れもなくかつての、兵士の気配。掛け値なしの本気だった。かつてネイが相対し、それだけで戦闘困難にさせられた、本気の殺気だった。
「舐めてくれたなティール。後悔しろ負け犬がぁぁあ!」
なぜ、お前はその殺気を浴びて、ティールに叫べる?ネイは瞠目する。その傍らで、ソニアが遂に動いた。
「――ティール、」
呼びかけに、青鈍がちらりと視線を投げる。
「無事で」
「あァ?だァれに向かってもの言ってんだ、お前みたいな甘ちゃんと一緒にすんじゃねェよ」
スコーピオンが、毒針をもたげる。
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灰7

「なぜだ、なぜ義兄上に続いて、お前まで」
がくりと膝を折るのは、ルークに似た栗色の髪の男だった。
「なぜ、今になって和平など説いた。反対されることは目に見えたろう。反逆者と謗られることすら、わかりきっていたろう。お前がそれを読めないはずがない。なぜ、なぜ…」
それは冷たい地下牢の中、微笑むのはルークだ。そしてまるで己がその内に囚われているかのように嘆き鉄格子を掴むのは、
「ユーリ義兄上」
ルークの、もう一人の義兄――現王エウリウス。血に染まらぬ現王。兄と、弟を亡くそうとする男。ルークと同じ栗色の睫毛を滂沱と濡らし、悲痛に喚く。
「私に、これ以上何を失えと!?私の力では最早止まらぬ、戦場を知らぬ私の声では、誰も止まりはしない!」
対してルークは落ち着いたものだった。家にいた頃のような平服を纏い、石の床に胡座している。
「戦場を知らぬからこそ、義兄上に託すのです。ロラン義兄上も私も、あなたにだけは戦場を知らずにいて欲しかった。それが、希望だと感じたから」
聖戦の担い手に和平など導けるはずがない。それを強く――強く感じたから。あの愛しい日々の中で。
「私は、過ったのです」
ルークは碧の瞳を緩め、呟いた。
「私は、脅やかすことでしか守れなかった。誰も、誰一人をも」
それゆえに殺した。殺し、傷つけ、踏み躙った。死にたいと、殺されたいと思っていた。それがあの子の手で成されるなら、幸せだろうと思っていた。
「だから私は、言い続けてきたのです。いつか、」

――いつか、

エウリウスが眦を裂くように目を見開いた。
「ルーク、お前は」
「どうか、何も仰らないで下さい。義兄上、私の、不肖の弟の最後の願いをお聞き下さるのであれば、私の首は」
城門の、外を見下ろせる場所へ。
「後を、頼みます」
その言葉を最後に、ルークは会話を打ち切った。頑なに腹を据えたその義弟から、義兄はゆっくりと視線を逸らし――立ち去る。
その足音を聞きながら、ルークは俯いた。
「そうだ、私は過った。ロラン義兄上の真意を汲み損ね、無用に人を傷つけたのだ」
扉を閉じる音、義兄の堪えきれぬ嗚咽を耳に、ルークは目を閉じた。
「ごめんね、アッシュ」
ルークの長い告白は、その言葉から始まった。
「本当は、ずっと君に殺されたかった。私は、君の父上を奪い、母上を殺した。だからアッシュ、いつか戦争が終わるときには、君は私を殺してくれ。私は死ぬから、君が、和平を担ってくれ。身勝手を言っていることはわかっている。けれど私はそのつもりで君を育てた。気に病むことはない。心置きなく私を殺してくれ。全ての紅の根源である私を、君の手で――ずっと、ずっとそう願っていた、はずだった」
手首と喉を繋ぐ枷を鳴らし、ルークは頭を垂れた。自嘲に震える笑声、掠れた声はやがて、
「あぁ、ばかだな、私は――」
あの子に、あの優しい子に、何と惨いことをさせようとしたのか。
獄の中で、頭を垂れたまま、ルークは清しく笑っていた。碧の瞳を濡らして、静かに笑っていた。
「ルーク、」
思わず、その名前を呼んだ。応えるように顔を上げたルークは、再び言った。
「ごめんね、アッシュ」
これは詩人が見せる過去の幻影だ。俺の声はルークに届かない。だが俺はその名を呼ばずにいられなかった。
「ルーク!」
「アッシュ」
涙に咽ぶルークの切れ切れの言葉。それは俺が一番欲しくて、手を伸ばすことを恐れた、答えだった。

君の手を、私と同じ紅に染めることなど、私にはできない。それが例え、私の我が儘でも、間違っているとしても。

「間違って、いるかい?私は、また過っているのか?君を愛し、育てたと思うのは、私の傲慢なのか?あぁ、誰か、アッシュ、答えをくれ。そうだと、言って」
ルークは、辺りを憚らなかった。誰もいない牢獄に、ルークは溢れる涙で海を創る。あのとき流した紅涙とは違う、凄烈な無色。何度も叫ぶように俺の名を呼んで、ルークは告げた。
そうだ。ルーク、間違ってなんかいない。俺は、俺は、俺は――父さん、あなたに、確かに、愛されていた。
「アッシュ。みすみす和平の糸口を手放した私を、愚かだと笑うかい?脅やかすことでしか守ることができなかった、この愚かな私を――」
違う。俺が許せないのは、俺が一番悔しいのは、あなたが死んだことだ。
あなたが、俺と生きてくれなかったことだ。
俺の非力なこの腕では、あなたを止められなかったことだ!
ふっと背中に風が吹きつけた。視界が揺らぐ。ルークの前にある格子が、軋みを上げて開いた。獄卒の言葉を受けたルークが、小さく微笑む。ルークが向かう先は刑場。ルークが死ぬために設けられた、場所。
「ルーク!」
両腕は届かない。俺の腕はあのときよりずっと長く、逞しくなったのに。それでも届かない。救い上げることが叶わない。俺の両腕はいつまでも非力なまま、何度も空を掻いた。
「ルーク!ルーク、ルーク!俺はここにいる!あなたは間違ってなどいない!あなたは、」
喚く声は遠い。聞こえないのだ。わかっている。わかっているが、ならばこの声はどこへ届ければいい。どうやってルークに伝えればいい。
ルークは格子の向こうの光に、そっと両手を組んだ。碧の光が穏やかに、灯のように揺らめいたのがわかった。
「アッシュ、私の願いはただ一つだ。私の我が儘に過ぎなくても、誰が否定しても――紅に染まらぬまま、幸せになりなさい」

父さん、

「ごめんね、アッシュ」
詩人が見せる場面が切り替わる。
手首と喉を枷で繋がれたルークは、交差する刃の前で静かに空を見ていた。ざわめきはやがて罵声となり、斬首台を取り囲む。
「お前のせいで、私の息子は死んだ!」
「英雄気取りの田舎者!」
「お前のせいで!」
「なのに戦を終わらせるだと!?」
「まだあいつらが生きているのに!」
英雄であった紅の天使は、終わらない戦に対する人々の不満のはけ口となっていた。終わらない戦が引き起こした悲しみと憎しみ。それがルークを戦に向かわせた。戦が終わらないのはルークのせいではないのに、人々はルークを責め立てる。ルークを紅の天使に仕立て、今度は殺そうとしている。その、奇妙な連環。断ち切るべきは、忌まわしきこの、
ルークはその罵声を全身に浴びながら、清しく笑っていた。清冽に透明なその表情に、悍ましささえ感じる。理解も同情も、ルークは求めていなかった。ただ、死を見ていた。白い刑服が酷く眩しく、酷く似つかわしくなかった。
「ロラン義兄上。不肖の弟は、最後にしか、あなたの真意がわからなかった。あなたは、ユーリ義兄上だけでない全てを、私をも、守りたかったのでしょう?」
処刑人にさえ聞こえない小ささで呟かれたその言葉が、確かに俺の耳朶を打つ。
「アッシュ。あのときの君の泣き声が、あの日々の君の笑顔が、私を今日まで生かしたんだ。守るべき、私の」
瞬間、ルークの声が途切れた。噴き上がる鮮血。視界の全てが紅に濡れた。

「とう、さん」
俺はあなたの何だったの。憎まれると知りながら、恨まれると知りながら、どうしてあんなに優しく在れたの。俺はあなたの十字架。いつかあなたを殺すために、あなたは俺を育てたの。
俺はあなたに罰を与える存在でしかないの。
それが如何に愚かな問いだったか。
「ルーク、父さん、父さん…!」
詩人の虚から目を逸らし、顔を覆う。叫びだしてしまいそうだった。
俺は知っている。ルークがどんなに戦を厭い、死を悼んでいたか。何を望んでいたか。
どんなに俺を、愛していたか。
ゼク・リザやシャキュールと再会したときの二人の涙。ルークが最後に俺を呼んで流した涙。それはいずれも、あの凄絶な無色だった。あの涙は、同じ味がするはずだ。
「あなたは、絶望などしてはならない」
詩人が竪琴を下ろした。
周囲は元に戻っていた。砕けた杯が転がる床、張りぼての玉座。何もできない、何も変わらない。
ここで俺は、長い間、何をしていた?
「あなたには、為すべきことがおありでしょう」

――あぁ、そうだ。

萎えた足を叱咤し、立ち上がる。

俺には、果たすべき約束がある。




詩人、いろいろ反則です。てゆうか、勉強しろよ私。
イリアッド / comments(0) / trackbacks(0) / 伝埜 潤 /

まさかの。

下着屋さんにて。
サイズ測ってもらったら、思っていたよりワンサイズ上でした。生理前だからかしら。というか、慢性的肩凝りはまさか下着サイズが合っていないからか?まさか、そんな。
日々燦々 / comments(0) / trackbacks(0) / 伝埜 潤 /

わかる。

十津川警部を見ていて。
使用されている拳銃が北朝鮮で作られたマカロフのコピー品だ、と一発でわかる自分。
ニートです。
日々燦々 / comments(0) / trackbacks(0) / 伝埜 潤 /

空気の抜けたタイヤ。

浮き輪でも可。

だめだ、毎日に張り合いがない。休みが欲しいだの、散々文句いいましたが、やっぱり仕事が忙しいのが一番ですね。日本人だもの。

三十六刻働けますか。働きたいです。
日々燦々 / comments(0) / trackbacks(0) / 伝埜 潤 /

軍バル3。

私が今たぶんもっと楽しみにしている漫画が、『軍靴のバルツァー』である。度々ブログでも騒いでいたので、今さらという感じだが。
1870年代?あたりのヨーロッパを思わせる架空の軍記モノ。ナポレオンより前のイメージだから、プロイセンは少々ズレてしまうか。でも何となくプロイセンな感じ。軍記モノなのに、主人公バルツァーが飛ばされたのは彼の母国ヴァイセンのお隣、軍事後進国バーゼルラントの軍学校の外部顧問。え、学園モノなの?
の、3巻。3巻目にしてさらに宮廷闘争が激化。頑張れライナー・アウグスト第2王子殿下。2巻で出てきたバルツァーの元・親友兼天才煽動家リープクネヒト(バルツァーは彼のことを「中2煮込み」と呼んでいる(笑))の所属が割れ、第三勢力の介入が明らかに。女帝を冠するあたり、モデルはオーストリアか?国名のニュアンスもそんな感じ。あ、でも今回出てきた鉄道の規格からすると、かなり広軌を使っているから、ロシアも有り?で、バーゼルラントの取り合いが始まるのだが、これ、バーゼルラントを緩衝地帯として残すのが一番いいんじゃないかね?
そんなこんなで頑なだったライナー・アウグスト殿下(私はこの人を見る度、プロイセン軍事大国の育ての親フリードリヒ軍隊王を思い出す)がバルツァーを個人的にスカウトすべく口説き始めたり。この人、10歳のとき既に現役の軍人が驚くようなクーデタ計画が作れたあたり、軍事的にはたぶん天才。やっぱりフリードリヒっぽいのだが、いかんせんまだ若いんだろうなぁ。バルツァーより年下だもんなぁ。思っていたよりお兄ちゃん子だったし。
騎兵科のヒロインも、最早扱いがヒロインじゃないので彼女の今後の絡みがあるのか不安。ただでさえ女っ気のない画面なのに。
次は冬だそうで、半年間楽しみに待ちますか。たぶん、私は読んだことないので何ともだが、銀英伝が好きな人は好きかもしれない。
日々燦々 / comments(0) / trackbacks(0) / 伝埜 潤 /

第三者。

同じ県内、同じような職を望む身としては他人事でいられない、中学生の自殺について。
いたたまれなさも憤りも、いろんな人の中にあるのだろうな。当事者なんか特に。ただ、それはあんな風に槍玉に上げて大事にされるものなのか。人一人なくなったのだから大事でない訳はないし、いじめが軽い問題でないのもわかっているけど、我々第三者が横から口を出す問題ではなかろうと思う。いじめた生徒はネットに指名手配よろしく実名を晒され、マスコミは教員・教育委員会を悪役に仕立てて糾弾する。善悪二元論に憑かれた、何ともお粗末な茶番劇。結局、事の真相ではなく、世間が求めているのは刺激的なドラマでしかないのか。
大津の中学校に爆破予告が出されたそうだ。理由は件の自殺について。お前、何様?ならお前が当事者として事件を未然に防げたのか?我々は良くも悪くも第三者でしかないのだ。
日々燦々 / comments(0) / trackbacks(0) / 伝埜 潤 /